UNIXパタンナーの一日
「この数ミリで、着る人の一日が変わるんです。」
そう語るのは、UNIXでパタンナーとして働く加藤さん。
ユニフォームづくりの中でも、あまり表に出ることのない“パターン設計”の現場。
その奥深い世界を、1日に密着して見えてきたのは、想像以上に人を想い、動きを想像し、
目に見えない「快適さ」や「動きやすさ」を図面で表現する仕事でした。
8:30 出社、工房の空気を整える
加藤さんは毎朝、裁断室と設計スペースの温湿度を確認するところから一日を始めます。
紙も生地も繊細な素材。季節や時間帯によって微妙に伸縮率が変わることをパタンナーは知っており、これも「正確な型紙」をつくるための大切な準備です。
装飾に関する3つのコツ
- 縫製しやすい構造=美しい仕上がり
- デザインと実用性を両立させる
- 素材と装飾の相性に注意する
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縫製しやすい構造=美しい仕上がり
装飾パーツの位置や幅にこだわることで、縫製ラインにムリが出ず、仕上がりも自然になります。見た目の美しさだけでなく、量産しやすい設計かどうかも重要な視点。
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デザインと実用性を両立させる
装飾が多すぎると、着脱や動作の邪魔になってしまうことも。特にユニフォームは「動きやすさ」が命。加藤さんは常に、「装飾があっても機能性を損なわないか」を設計段階でチェックしています。
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素材と装飾の相性に注意する
薄手の生地に重めのボタンやリボンを付けると、バランスが崩れたり、すぐに傷んだりする原因に。装飾の種類と素材感が合っているかどうかも、長く着られるユニフォームの鍵となります
9:00 設計スタート。
この日の案件は、物流倉庫スタッフ向けのユニフォーム。重い荷物を持ち上げたり、腕を大きく伸ばしたりといった独特の動作が多いため、見た目の美しさだけでなく、機能性にも高い水準が求められます。
加藤さんはそうした動きを想定しながら、CAD上でミリ単位の調整を加えていきます。

お客様の動きを「読み取る」
「動作を妨げず、だらしなく見えない絶妙なバランスを探すのがパタンナーの仕事」と加藤さん。 現場の動画や営業担当が持ち帰ったフィードバックを何度も見返しながら、肩幅や袖口、背中のゆとりなどを丁寧に設計していきます。
1ミリの違いで、肩が動かしやすくなったり、見た目がシャープに変わったりするんです。動きを想像して図面に落とし込むことが、私たちの仕事です。
11:00 試作チェックと工場チームとの連携
UNIXの自社縫製工場では、設計と縫製の距離が近く、試作と調整がスムーズに進みます。
試作品を見ながら縫製チームと加藤さんが交わすやりとりには、専門用語が飛び交います。
「ここの折伏せ、もう2ミリ外側にずらした方が表情が整うかも」
「後身頃のヨーク、少しだけ高めに取った方がラインがきれい」
まるで建築家と施工チームが一つの建物を仕上げていくようなやりとり。
ここにもUNIXならではの“現場力”が光ります。
13:00 ランチは作業台で軽く
忙しい時期は、作業台でおにぎりをつまむだけの日も少なくありません。
「でも、自分の設計が現場で“動きやすかった”って言ってもらえると全部報われます」と笑う加藤さん。オーダーメイドだからこそ、お客様の声をダイレクトに受け止められる。それもこの仕事の醍醐味だと言います。
14:00 修正・再設計。そしてまた試作へ
午前中に上がった試作品をもとに、午後は修正作業。加藤さんは「見た目」「動き」「コスト」「量産しやすさ」という相反する要素を一つのパターンに落とし込むため、何度も調整を繰り返します。

17:30 翌日の準備と、図面の整理
設計データだけでなく、フィッティング時のメモや写真もすべて記録に残すのがUNIX流。
過去のパターンと比較して、何が改善されたかを見返せる仕組みも整っています。
「ユニフォームは、誰かの“戦闘服”です。現場の空気や動きを知ることで、もっと着る人に寄り添える設計ができる。それが私たちパタンナーの仕事だと思っています」
ものづくりの“静かな中核”として
パタンナーのしごとは、決して派手ではありません。
けれど、その一線があるかないかで、ユニフォームの着心地も、作業のしやすさも印象も変わる。
「見えないところにこそ、こだわりを。」
加藤さんの姿に、UNIXが大切にする“ものづくりの哲学”が重なりました。
制作担当者
佐藤 美月



